駒井亨衣のメールマガジン
Vol.140 2018年12月号

「 シェアはパワーを与える 」

自分だけで止めておかず、シェア(分かち合い)をすることの大切さを、最近感じたことがありました。自分の体験や感じたことを人にシェアすることを、あまりしない方も多いのではないかと思います。こんなことを言っても仕方ない、言ったら恥ずかしい、言ったら何を思われるのか分からないなどが理由だと思います。

だから近くにいる人であっても、よく何を考えているのか分からないと思ってしまいます。逆にシェアをしてくれる人には、親密さを感じると思います。その人のシェアが、学びや気づきを人に与えます。言っている本人は、普通に話していても受け取る人に影響を与えています。

特に私がそれを感じる場面は 学び舎傍楽のコンテンツ「不登校のおはなし会」です。同じ経験を持つお母さんたちが集い、同じテーマでシェアする。また、お互いがそのことで悩んでいるという共通点があると、あっという間にお母さん同士の距離が近くなります。

それは、本音で話すからです。取り繕わず、嘘が無いからです。

先日の不登校のおはなし会でのことです。あるお母さんが、お子さんが不登校になり、どうしていいかわからず不安で、最初から泣いておられました。しゃべることもできない状態でした。しばらくは他の参加者の方の話を聞いておられました。

すると、他の参加者の方の話を聞くうちに、自分だけが辛いんじゃない。みんな同じ経験をし、同じ道を通って、ここにいることが分かったそうで、心理的安全性が確保されて、涙が止まり、少しずつ小さな声で話し始めてくれたのです。

他の参加者の方々は、その話にうなずきながら静かに聞いていました。参加者の方々が作るあたたかな空気が、泣いていたお母さんを応援しているような感じがしました。そして別のお母さんがしんどい経験を、笑いに変えて話してくれて、みんなが、にこやかになっていきました。

そのうち、だんだんとそのお母さんの面白トークに、みんながゲラゲラと笑いだし、「そうそう、分かるわ~。うちもそうなんですよ。(笑)」とお互いの話のシェアが、どんどん活発に出始めました。

泣いていたお母さんも、いつの間にか楽しそうに笑っていたのです。そして、うちに溜まっていた重いものを吐き出すかのように話をし始めて、話せば話すほど、元気になっていきました。きっと重たいものを吐き出せて、軽くなったのでしょう。

泣いていたお母さんは、「私は笑い方を忘れていました。こんなに笑ったのはどれくらいぶりでしょうか。体中があったかくなりました。」とニコニコしながら、しっかりした声で話してくれました。

そして、「不登校で悩んでいることを話したのは初めてです。誰もわかってくれなかったのに、みなさんがあたたかく受け止めてくださって嬉しいです。ここにたどり着けて本当によかったです。ありがとうございます。」と何度も何度も言っておられました。

3時間前のお母さんとは別人のような、明るい顔になっていました。私は、しみじみとシェアの凄さを感じました。黙っていたらそんな経験をしている人たちだと誰も知らないです。でも、自分がシェアすることで人の力になったり、勇気になったりするんですよね。

ありのままに、正直に、本音で話してくれることが、人に感動を与え、パワーを与えます。今回の不登校のおはなし会は、参加したお母さんたちが持つ、明るくて前向きなエネルギーに満ちた言葉がたくさん飛び交っていました。

ただ学校に行っていないだけ。学校が合わないだけ。子どもの特性が、とても優しくて、あたたかくて繊細。全力疾走で走り過ぎて、もうエネルギーがなくなってしまって休憩が必要。

勉強なんか、いつだって取り戻せる。自分の人生に真剣に向き合っている子たちなんだ。頑張り屋さんで、周りの人のためを思っている。何としてでも生きていける。子どもの不登校でいろんなものを手放すことができて楽になった。子どもには子どもの人生があるから、親は一番の応援者で見守るだけ。

参加者の方々からは、このような感想をいただきました。最後はみんな楽しかった!と、満足気な顔をして帰って行かれました。なんて素敵な場なんだろうと改めて思いました。自分の経験をありのままに包み隠さずにシェアする。私はこのことがどんなに人にパワーを与えるのかを痛感しました。

だから、私は今後、自分の経験を臆することなく、どんどんシェアしていこうと思っています。

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