┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 駒井亨衣のメールマガジン Vol.151 2019年11月号
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 充填機のナオミ━━┛

「HSC 人一倍敏感な子ども」


みなさんは HSCという言葉をご存知でしょうか?
これは、人の気質(特性)のことで「人一倍敏感な子ども」のことを指します。

私は、3年前までHSCという言葉も知らなかったですし、その気質を持った子や大人が、世界のどの国であっても5人に1人もいるということも知りませんでした。5人に1人となると40名ほどのクラスであれば8人はいて、2割はその気質を持っていることになります。

みなさんの周りにいる『気にし過ぎる、心配性、不安感が強い』と感じる人は、たぶんこの傾向が強いと思います。大人になっていくと、経験値から折り合いを自分とつけていくことができるようになるそうですが、この気質は生まれつきのもので、大人になっても無くなるものではないとのことです。

もともと生まれもったものなので、変えるとか治すとかいうものでもなく、その気質を生かしながら、自分に合った人生を生きていくことが大事だと聞きました。そして、その気質を持った人が、今よく言われる「生きづらさを感じている人たち」に当てはまることもあるそうです。

HSCのことを私が知ったのは、学び舎傍楽の不登校のおはなし会に3年前からいつも参加してくれているお母さん(Oさん)が、この特性を持っている息子さんの話をしてくれたことがきっかけでした。

Oさんの息子さんは音に対して非常に敏感で、人のヒソヒソ話までも全部聞こえてきてしまう特性があるので、集団の中にいると、みんなの話声などに強いストレスを感じてしまうそうです。また、学校で先生が自分ではなく他の人に怒っているのを聞くだけで、ドキドキしてしまいしんどくなるそうです。

Oさんは、始めは息子さんがおかしいと思っていたけれども、HSCのことを知って、その特性を持っている子なのだと理解ができてから息子さんを責めることもなくなって、受け入れて楽になったと話してくれました。

ここでHSC(大人の場合はHSP【Pはpersonの略です】)の特性をお伝えします。
【以下引用『ひといちばい敏感な子』(1万年堂出版、エレイン・N・アーロン著、明橋大二訳)】

・深く処理する
・過剰に刺激を受けやすい
・感情の反応が強く、共感力が高い
・ささいな刺激を察知する

HSCかどうかを知るための、23のチェックリスト

次の質問に、感じたままを答えてください。子どもについて、どちらかといえば当てはまる場合、あるいは、過去に多く当てはまっていた場合には「はい」、全く当てはまらないか、ほぼ当てはまらない場合には、「いいえ」と答えてください。

1.すぐにびっくりする
2.服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる
3.驚かされるのが苦手である
4.しつけは、強い罰よりも、優しい注意の方が効果がある
5.親の心を読む
6.年齢のわりに難しい言葉をつかう
7.いつもと違う臭いに気づく
8.ユーモアのセンスがある
9.直感力に優れている
10.興奮したあとはなかなか寝つけない
11.大きな変化にうまく適応できない
12.たくさんのことを質問する
13.服がぬれたり、砂がついたりすると、着替えたがる
14.完璧主義である
15.誰かがつらい思いをしていることに気づく
16.静かに遊ぶのを好む
17.考えさせられる深い質問をする
18.痛みに敏感である
19.うるさい場所を嫌がる
20.細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)に気づく
21.石橋を叩いて渡る
22.人前で発表するときは、知っている人だけのほうがうまくいく
23.物事を深く考える

得点評価:
13個以上に「はい」なら、お子さんはおそらくHSCでしょう。
しかし、心理テストよりも、子どもを観察する親の感覚のほうが正確です。たとえ「はい」が1つか2つでも、その度合いが極端に強ければ、お子さんはHSCの可能性があります。

【引用終了】

これを読まれて、「自分もそうかもしれない」と思う人もいるのではないかと思います。

不登校のおはなし会に来るお母さんたちの中にも、このことを知らない人がいて、HSCの話をすると、自分の子どもにかなりあてはまるという人が多いです。そしてお母さん自身も、その特性を持っていたことに気付く人もいます。「そういえば、私も学校に行くのが本当に嫌だったけど、行く選択肢しかなかったんですよ。」などと言う人もいます。

不登校経験のある私の子ども2人にも当てはまることがあります。育てているときに2人とも私と違って、非常に繊細だなあと思っていました。人の心を読めてしまったり、正義感が強かったり、1人の時間が必要だったり、空気の悪いところは苦手だったりという特性がありました。どちらかというと、HSCの傾向が強い方だと思います。

それに反して私は、この傾向がほとんど無いなあと思います。鈍感力があるって感じでしょうか。(笑)人がいても気にならないし、人の感情に振り回されることも少ないです。ストレスを感じにくい気質だと思います。逆を言えば、気が付かない、のんき、大雑把ってことになるのかもしれません。傾向の強い人と、そうでない人が一緒にいると、あまりにも感覚が違い過ぎて、理解することがお互いに難しいなあと思います。

不登校のおはなし会に参加するお母さんの中には、私のような感覚の人もいて、そのお母さんの子どもさんがHSCの場合、子どもさんを理解することが難しく、なんでそうなるんだろうと悩んでしまうことが多々あります。

私もそうでした。そこには基本的に自分が正しくて、子どもがおかしいという考えがありました。だから子どもを承認するまでには苦しい時間が長くありました。これはHSCの気質だけではなく、自分と違う感性、感覚、考えを持った人を受け入れるのが難しいこととも同じことだと思います。

そもそも、人は違って当たり前なんですよね。違うことで理解しようとしてお互いが歩みより、関係性を深めていくことができます。

自分の正しさを手放して相手の立場に立って考えてみる。そうすると、相手の声が本当に聞こえるようになります。いかに人間は、自分が正しくて相手が間違っているというメガネをかけて生きているか驚くほどです。特に親子は遠慮がないので、親が言いたい放題で辛辣になり、そのことで関係性が悪くなることも多いのではないかと思います。関係性を修復するには、親自身がそのメガネを外して、子どもの立場に立って考えることが必要です。

しかしながら、どのように子どもと向き合ったらいいのか分からなくなってしまっている親も多いなあと思います。今までは不登校のおはなし会で、親のつらい気持ちに共感したり、勇気づけたりする場を作ってきました。でもそれだけではなく、子どもとの関わり方を勉強することが必要だと感じるようになってきました。

そこで、11月から「子どもとの関わり方勉強会」を始めることにしました。初回のテーマは「HSCを学ぼう」です。講師は、Oさんがつとめてくださいます。息子さんとの経験を通して話をしてくれるので、きっと参加してくれる人に深い理解をしてもらえると思います。

苦しいことをそのままにしておくのではなく、子どものせいにするのではなく、分かろうとすることが何よりも大事だと思います。親が子どもを理解しようと勉強することは、寄り添うことへの第一歩だと思います。

だから、私は不登校のおはなし会でお母さんやお父さんに、「勉強してください。情報を常に収集してください。関係のあるいろんなとこに出かけてください。」と言います。

そうすると光が見えたり、今まで出会うこともなかった人たちに出会えたり、気持ちや頭が整理されたり、今までと違う世界を知ったり、親も人生が豊かになっていくことに繋がったりすると思っています。そして何より、知らないことを知ることによって、気持ちがかなり楽になると思います。考えてみれば、誰もが何かしらの個性、特性を持っています。
「みんな違うのが当たり前。みんな違っていていい。補いあって生きていけばいい。」

違いを認め合い、理解しようとすることが大事だということを少数派のHSCの気質を持っている子(人)が私たちに伝えようとしてくれているのではないでしょうか。

>メールマガジンのバックナンバーに戻る